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成年被後見人が死亡した際の相続手続きについて

本コラムでわかること

成年後見人と被後見人の関係は、被後見人が生存している間にのみ存在します。

本コラムでは、成年被後見人の死亡によって成年後見業務が終了した後の相続手続きの概要について詳しく解説します。本コラム記事を通して、成年後見人の権限の終了、相続人への財産引き渡し、そして相続手続きの流れについての理解を深めることができます。

成年後見は被後見人の死亡により終了する

成年後見制度は、被後見人の利益を守るために設けられた制度です。

よって、被後見人の死亡に伴い自動的に終了します。ここでいう終了とは、成年後見人による財産管理や身上監護といった職務の完全な終了を意味しています。

成年後見人の役割と権限

成年後見人は、被後見人の生活と財産を守るために必要な権限を与えられ活動します。

必要な権限とは、財産管理や日常生活のサポート、必要に応じた医療や介護サービスの契約などが含まれます。しかし、これらの権限は被後見人が亡くなると同時に消滅します。

被後見人の死亡で成年後見人の代理権は消滅する

成年後見人の代理権は、被後見人の死亡をもって終了します。

そもそも成年後見制度は、被後見人の利益を守ることが目的です。その主体である被後見人が死亡してしまえば、目的そのものが機能しなくなることから代理権も消滅します。

成年後見人は相続手続きをせず財産を相続人に引き渡す

被後見人が死亡したからといって、成年後見人は相続手続きを行う立場にはありません。

成年後見人が引き続き相続手続きを行えるとしたら、成年後見業務が開始される前に被後見人が作成していた遺言書に「遺言執行者」として、指定されていた場合に限ります。

原則として、相続手続きは被後見人の法定相続人が行うべきものであり、成年後見人の役割は、財産を適切な相続人へ引き渡すことに限定されます。

葬儀・告別式は成年後見人が行うものではない

成年後見人の業務範囲は、葬儀や告別式の手配には及びません。

これらは一般的に被後見人の親族が行うべきであり、誰も親族がいないといった特別なケースを除いて、成年後見人が葬儀・告別式を行う義務はありません。

相続人に財産を引き継ぐ際の注意点

被後見人の財産を相続人に引き継ぐ際には、いくつかの注意点があります。

いずれも相続人間の紛争を避け、円滑な財産移転をするために重要なポイントです。

以下では、相続人の状況別に詳しく解説します。

相続人が複数いる場合

相続人が複数いる場合、財産を代表者に引き渡すことが推奨されます。

ただし、代表者である相続人に財産を引き渡す際は、他のすべての相続人から合意を得た上で財産を引き継ぐことが望ましいです。すべての相続人からの合意を得られていない場合、トラブルへとつながる恐れがあるため注意しましょう。

相続人がいない場合

相続人がいない、または相続人全員が相続放棄をした場合、財産を引き継ぐ相続人が存在しないことになります。このような状況では、家庭裁判所に「相続財産清算人の選任」を申し立てることになり、選任された清算人に財産を引き渡します。

なお、相続財産清算人は、従来は相続財産管理人と呼ばれていましたが、令和541日施工の民法改正によって名称が変更されています。

成年後見人自らが相続人である場合

成年後見人が同時に被後見人の相続人でもある場合は、財産の管理と引き継ぎにおいて特に注意が必要です。他の相続人からすれば、自らが有利になるよう裏で調整していると捉えられる危険があります。相続トラブルを避けるためにも、財産の引継ぎ時には他の相続人に対し、明瞭な財産開示を行ってください。ただし、相続人が成年後見人のみであった場合は、

相続人が行方不明の場合

相続人が行方不明である場合、そのままでは財産を相続人に引き渡せません。

このような状況下では、家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任申立」をした後、専任された管理人に相続財産の引き渡しを行います。

相続人が認知症の場合

相続人が認知症であり、自ら財産を管理することができない場合は、その相続人に代わって成年後見人を選任し、引き渡しを行う必要があります。成年後見人を選任させるには、家庭裁判所に「後見開始の審判」を申し立てなければなりません。

葬財産引き渡し後の相続手続きの流れ

成年後見人による相続財産の引き渡しが完了した後、相続人は通常の相続手続きを進めていきます。一般的な流れとしては、相続人の調査、相続財産の把握、遺産分割協議、名義変更や預貯金の払い戻し、相続税の申告・納税などが含まれます。

【相続手続きの流れ】

  • 相続人の調査:亡くなった方の戸籍謄本をすべて取得し相続関係を調査
  • 相続財産の把握:相続の対象となる財産を正確に把握
  • 遺産分割協議:相続人全員参加による分割協議で遺産の行方を決定
  • 名義変更や預貯金の払い出し:各相続人が自身の相続分に従って変更
  • 相続税申告・納税:相続税を納める必要があれば10カ月以内に申告・納税

以上が一般的な相続手続きの流れとなりますが、遺言書があるケースでは遺産分割協議の部分が、遺言書の内容通りの分配となります。ただし、遺言書があったとしても、相続人全員の意向次第では遺産分割協議を行うことも可能となっています。

このように、相続手続きは個々の事情によってケースバイケースな対応が必要となるため、相続人同士でトラブルに発展する前に、専門家に相談することが重要です。

被後見人が死亡した後に成年後見人が行う手続き

被後見人の死亡後、成年後見人は後見終了のための複数の手続きを行います。

具体的には、後見終了の登記、相続財産の収支計算、相続人への財産の引継ぎ、後見事務終了の報告などが含まれます。これらの手続きは、成年後見人が業務を終了したこと、そして、被後見人の財産を適切に相続人に引き継ぐことを目的として行われます。

後見終了の登記

成年後見の終了は、家庭裁判所への報告だけでなく、法務局への登記変更手続きも伴います。

成年後見人が被後見人の死亡によって、成年後見関係が終了したことを公式に記録するためには、「成年後見の終了登記」を行う必要があります。

成年後見の登記は、「東京法務局 民事行政部 後見登記課」がすべて管轄しているため、終了の登記も同課に申請する必要があります。申請人となれるのは、成年後見人自身、もしくは本人の親族となっています。申請の際は、登記申請書に必要事項を書き込み、死亡を証する書面(除籍謄本や死亡診断書など)と共に法務局へ提出することで手続きが終了します。

管理している財産の計算

被後見人の死後、成年後見人は管理していた財産の収支計算を行い、「財産目録」を作成します。財産目録は、相続人への財産引継ぎの基礎となり、財産の全体像を明確にするためにも必ず作成しましょう。財産目録には、被後見人の持つ預貯金や不動産といったプラス財産だけでなく、借金などのマイナス財産の詳細について記載しなければなりません。

相続人への財産の引継ぎ

成年後見人は、財産目録をもとにして、被後見人の財産を相続人に引き渡します。

先述した「相続人に財産を引き継ぐ際の注意点」を参考にし、引き継ぎに関するトラブルが起こることのないよう、細心の注意を払って引き続きを行いましょう。

後見事務終了の報告

相続人に対して、すべての財産の引き渡しが完了した後、成年後見人は家庭裁判所に後見事務終了の報告を行わねばなりません。

裁判所への報告の際は、以下の必要書類、必要に応じてその他の関連書類を提出します。

 

【後見事務終了時の必要書類】

・被後見人の死亡の記載がある除籍謄本(除住民票)

・後見事務終了報告書

・財産目録

・財産状況を裏付ける資料(預貯金通帳のコピーなど)

・相続人の受領書など

成年後見人ができる死後事務とは?

成年後見人の役割は基本的に被後見人の死亡と同時に終了します。

しかし、特定の状況下では、成年後見人が死後事務を行うことが法律によって認められています。具体的には、被後見人の財産の保全や、急を要する財産に関する事務です。

成年後見人には応急処分義務がある

急迫の事情が存在する場合、成年後見人は応急処分の義務を負います。応急処分義務とは、被後見人の財産を守るため必要な措置を講じることです。たとえば、財産の急速な価値減少を防ぐための早期売却、相続財産の保存に必要な行動などが該当します。

成年後見人ができる死後事務の要件と範囲

成年後見人が行える死後事務の要件は、被後見人の相続人が財産を適切に管理できる状態にないとき、またはその行為が相続人の意思に反していないときとなっています。

また、具体的には以下の行動が範囲として挙げられます。

 

【死後事務の範囲】

①特定の相続財産の保存行為:建物の雨漏りの修繕など(

②相続財産に関する債務の支払い:医療費や公共料金の支払など(

③本人の死体の火葬・埋葬に関する契約:家庭裁判所の許可が必要

④その他、相続財産の保存に必要な行為:家庭裁判所の許可が必要

※①②の具体的なサポート内容や範囲については、専門家との調整が必要になります。

まとめ

成年被後見人の死亡は、成年後見制度の終了と相続手続きの開始を意味します。

そして、成年後見人の責任は、主に被後見人の財産を適切に相続人に引き渡すことです。

ただし、相続手続きは、被後見人の死亡後に相続人が行うものであり、成年後見人の役割は、相続人にスムーズに財産を引き継ぐための準備を整えることでしかありません。

必要に応じて相続人と成年後見人が密接に協力し、適切な情報共有をすることが、トラブルを防ぐためには必要です。もし、成年後見業務の終了について不安があるという方は、司法書士にアドバイスを求めることを推奨します。

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この記事を担当した司法書士
司法書士法人小関綜合事務所 代表司法書士 小関 貴之
保有資格司法書士・行政書士
専門分野相続・家族信託・成年後見
経歴東京音楽大学を卒業後、証券会社勤務を経て、司法書士資格を取得。司法書士事務所での勤務経験後、平成21年9月に独立。開業以来、横浜・港南エリアを中心に、相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記などの法務サポートに取り組んでいる。
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